みやわきろく

インタネッツに雑念を放流する

【ネタバレあり】映画「旅猫リポート」を見てきました

久しぶりに1,800円をドブに捨てるという体験をしてしまった。肩を落としながら今やけ酒を飲んでいる。

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神戸三宮 味兵衛。地酒が充実している


映画はエンドロールまで楽しむのが礼儀だと思っているものの、原作が好きで観に行った身からするとあまりにも酷すぎたのでエンドロールが流れた瞬間に席を立ったし、何なら途中で出ようと何度も思った。
公開2日目にこんな感想を上げるのは申し訳ないが、素直な意見として受け止めてほしい。

一応映画公式サイトへのリンクは貼っておくが、未見の人は原作だけ読んでおけばいいんじゃないかな…

旅猫リポート (講談社文庫)

旅猫リポート (講談社文庫)

疑問点①:動物に声をつける必要性

悟とともに旅をする猫、ナナの声を高畑充希が担当すると知った時点でやめておくべきだったかなあ…と思った。(チケットを取ったあとで知った)
確かに原作の中でもナナはとてもよく喋る。悟の代わりにいろんなことを読者に伝えてくれる存在であり、だからこそ親近感が湧くように描かれている。

しかしだからといって、映画版で声をつけるほどのことだったのか?という疑問が残る。
ナナを演じた猫はとても表情豊かで、特に悟が入院するのに彼を置いていったシーンではケージの中をずっとカリカリと忙しなく噛んでいて、「置いていかないで!」という気持ちを伝えてくれていた。しかしそのカリカリという音に被さるように声がつけられていて、感動が一気に霧散してしまう結果になっている。高畑充希の叫びがとにかくやかましい。感情がこもっているのはいいことなんだけどね…。
せめてあのシーンだけでも声をつけないでもらえたらもう少し感動も増したのではないか。

声といえばスギ宅で飼われている犬、虎丸とナナが口論するシーンも、もとの犬猫の鳴き声とアフレコ声が被りすぎて何を言っているのか聞き取れなかった。あれ、せめて鳴き声の方もう少し小さくできなかったのだろうか…。

疑問点②:最終目的地をなぜ変更したのか

原作では悟が最期に向かう場所は北海道となっている。船に乗る、というところは確かに変わらないのだけれど、なぜそれをわざわざ真逆の北九州にしたのか。全く必然性が感じられないし、ナナと花畑を訪れるシーンは北海道だからこそ活きたはず。変えるにしても、せめて東北とかあまり差がない場所にしてほしかった。原作を読んで頭の中にイメージができてしまっている身としては、ギャップを埋めるのが大変すぎて中身が入ってこなかった。

不満点いろいろ

これは完全に自分のせいなんだけど、ナナちゃんのイメージが「毛並みがさらさらの美人さん」だったので、実写ナナちゃんとの解釈違いにとても苦しんだ。
実写ナナちゃんはサイトを見てもわかるんだけど、どちらかというとプードル系のもふもふ毛なんだよね…違う、違うんだ……

農家を営んでいる友人、ヨシミネとのやり取りがバッサリカットされてしまっているせいで、ラストシーンが味気ないものになってしまっている。
この作品のポイントは『猫を通じて本来繋がらなかったであろう人たちの交流が生まれる』ところにあるのであって、その繋がりに関わる人とのエピソードを省くのなら最初からヨシミネ(らしき人物)を登場させなければよかったのではないか。
変に一瞬だけ登場させることによって、映画版ナナからは「あの人は知らない人だけど」なんて言われてしまうのはあまりにも不憫すぎる。あの家で拾われた猫ちゃんとナナちゃんとのやり取り、かわいかったのになあ…*1

猫は赤色をうまく認識することができないそうだ。
原作では悟がナナに「きれいな赤色だね」と伝えることで、ナナが「よくわからないけどこれが赤色ってやつなんだ」と知るシーンがある。わたしはこのシーンがすごくお気に入りだ。
ナナはもともと野良猫で、ナナが野良のままだったら「赤色」を知らないまま一生を終えてしまっていたはずだ。それを教えてくれた悟という存在の大きさがそのシーンを通じて語られていた…とわたしは感じていたのだが、そのくだりもバッサリ落とされていて本当に不満しかない。あのシーンがあるからこそナナと虹を見るシーンが映えてくるというのに!!監督は!!原作から何を読み取ったというのか!!!

というかそもそも、全体的に登場人物の心情の描写が足りなさすぎて感情移入しづらいのでは?と思ってしまうところがある。
例えば悟がスギの経営するペンションに行くシーン。スギは悟と昔話に花を咲かせるのだが、本来はそこでスギが昔の禍根を精算しすっきりとした気持ちで悟とナナを受け入れ、主人の心情の変化を知った虎丸がナナを受け入れ最後には尻尾を振って見送るという場面がある。
しかしながらスギの気持ちが精算されているようなシーンもすっかりカットされてしまっているため、虎丸とナナの間に深い溝が残ったままナナはペンションを離れることになってしまっている。あまりにも乱暴すぎるのではないだろうか。

総評

福士蒼汰のファンだけが楽しい作品なんじゃないですかね。
よかったことといえば悟の少年時代を演じていた彼が福士蒼汰に本当に似ていてよくこんな子見つけてきたなあ…と思ったところと、あとは叔母の演技くらいかな。
DVDで見てたら円盤でフリスビーしたくらいにはつまらない作品でした。悲しい。酒が進みます。

*1:そこが実写だとやりづらくてカットしたんだなあ、と察してしまった